猫・犬アレルギー

 

最近のペットブームは昔の番犬で飼っていた頃と違って、家族の一員として家の中で飼うことが多くなってきている。しかも近年の日本の家屋構造が密閉化とも相まってアレルギー症状を引き起こすことが稀でなくなってきている。

 

猫・犬抗原

猫の主要抗原はFel d 1 と呼ばれる。一般に細塵1g当たりに含まれるFel d 1（μg/g dust）として表現される。Fel d 1の主要産生部位は皮膚であるが、舌下腺、涙腺、尿中、肛門嚢の分泌中にも認められる。雄猫のほうが産生量多く、去勢するとFel d 1の産生が減少する^30）。感作に必要な抗原量は１μg/g dust以上であり、喘息発作に必要な量は８μg/g dust以上と言われている^31）がそれ以下でも感作を起こすとの報告もある^32）。犬の主要抗原はCan f1と呼ばれている。Can f1 は経５マイクロメーター以下の粒子に含まれており^24）、またFel d 1の粒子も2.5マイクロメーター以下でともに長時間空中に漂い³⁸⁾容易に細い気管支まで吸入され発作をおこす。10μg/g dust以上が悪化させるレベルと疑われている³⁶⁾。

食物アレルギーと同様に猫アレルギーのある喘息児でfree Fel d 1 及びIgE-Fel d 1 免疫複合体が検出される^13）。猫アレルギーの検査診断はプリックテストかRASTでよい^8）。犬アレルギーも同様である。

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室内アレルゲンであるダニDel　p1、Del　f1）やゴキブリ（Bla　ｇ2）の抗原量とアトピーの子供達がこれらの抗原に対する感作と相関しているが、猫抗原（Fel　d1）とは相関しない^1）35)。喘息は室内アレルゲン（ダニ、ゴキブリ、猫）に強く感作さているが、室外アレルゲン（花粉）には軽度感作されている^1）。猫アレルゲンは地域のアレルゲンと考えられる^1）。猫または犬に感作されている中等症の喘息児について、学校と家庭の猫と犬の抗原を測定したところ学校の抗原量がより多かった。この患児が学校に通い始めると気道の過敏性が亢進した^2）。米国では猫にアレルギーのある喘息児はより重症であると報告されている^20）。シンガポールでもペットアレルギーのある喘息児の呼吸器症状の頻度を増大させる^23）。犬の抗原はCan f1 であるが、犬を飼っている全ての家で、また飼っていない家でも３分の１の家で検出される。スエーデンの最北端では、喘息の罹患率は8％ある。ダニはほとんど成育していないが、学校で犬、猫のアレルゲンを測定したところほとんどのサンプルから検出された。その量は、犬や猫を飼育していない家庭よりも多かった^3）。ダニがほとんど生育出来ない北欧の寒冷地ではペットが重要な喘息の抗原である。高地で乾燥地帯である米国ニューメキシコ州でも喘息児の抗原として犬や猫の抗原がダニやゴキブリよりも重要である^29）。カナダのTristan da Cunha では1974年以後猫は一匹もいない。1993年に各家庭のほこりを採取し、全住民に皮膚テストを施行したところ57人（20.1%）で陽性だった。このうち6人は1975年以後に生まれた。うち5人は島外の学校に通ったことがある。20の家庭でホコリを採取したが、1家庭で猫の抗原が検出できただけだった。Der p1、Fer f1抗原は全家庭から検出された。このことから、猫の抗原は猫がいなくなってからも長期に検出されるか、外部からの訪問者が衣服に付けて持ち込むかが考えられる^5）21）。Almqvistによると、猫を家庭で飼育している学童が25％以上のクラスは、10%未満のクラスより約5倍の抗原が教室から検出された^4）。猫を飼っていない学童児の服の猫抗原は、登校日後には増大していた。学校はペットの抗原に曝される重要な場所である。英国の病院でダニと猫、犬の抗原を調べたところ、ダニに関しては非常に低レベルの抗原であったが、椅子のクッションに高レベルの犬と猫の抗原がみられたが、週3回掃除機で吸引する事によって抗原を低下できた^22）。また公共施設の椅子のクッションでもCan f1 がみられた^25）。

 

猫・犬アレルギーの疫学

羽枕の使用とペットの飼育は、鼻炎の増加を来すことはない。一方、羽枕以外の枕を使用している場合は逆に鼻炎を増加させる^10）との報告もある。22歳から44歳の成人では、猫を飼っている人は飼っていない人よりも喘息、気管支炎症状が多かった。猫を飼っている飼っていないに関わらず皮膚テストで陽性の人は、猫を飼っていなくて猫にアレルギーのない人よりも喘息に罹患しているリスクが高かった^12）。

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日本でアレルギー患者がペットを飼っている率は43％あり、11.2％は過去にペットを飼ったことがある。飼っている人の年齢には6-12歳と30-40歳に2峰性のピークがある。外国育ちの犬を飼っている患者の80％は室内で飼っている。この比率は次第に増加している。最近著名に増加しているのが、ハムスターで20％が飼っていた^7）。症状（眼、鼻、皮膚、喘息）の悪化に気付くのは約10％である。家族に喘息または鼻炎がある患者では4人に1人症状がある^7）。

姫路市の小学生新入生の調査では平成10年度で猫または犬を室内で飼っているのは一般児で5.9％、喘息児では7.7％であった。個別の動物では猫では一般児2.4%、喘息児3.4%、犬で一般児3.8%、喘息児4.7%、小鳥では一般児1.3%、喘息児0.9%、ハムスターでは一般児6.9%、喘息児3.4%であった（図１）。最近ハムスターが多く急増している³⁷⁾。また室内で動物を飼っていない児童が喘息に罹患しているのは4.8％、猫または犬を飼っている児童が喘息に罹患しているのは6.2％で統計学的には有意差がなかった。最近では幼稚園でペットの世話をさせる機会が多くなっており、そのために症状を呈することもある^16）ので注意が必要である。

猫を飼っている患者で70％がCAP陽性で、猫を飼っていない患者でのCAP陽性率は34％である^6）。

アトピー性皮膚炎で犬を室内で飼っている場合、生後3ヶ月以内にRAST陽性率が高値になる^18）。また自宅だけでなく父母の実家で飼われていても陽性率は高く、実家を訪れる回数に比例して陽性率が上昇する^18）ので注意が必要である。

その１例を紹介する。患児は１歳。生前より室内で犬を１０匹飼っている実家から譲ってもらった犬を飼っていたがアトピー性皮膚炎が悪化してき、検査でも犬皮屑RASTでクラス４であったので犬を実家に返した。その後比較的良好であったが、実家にどうしても行かなければならない用事のために訪れた所、訪問して１時間頃から痒がりだし、６時間後には皮膚から浸出液が出現して全身を掻きむしり出したので帰宅、翌日さらに浸出液がひどくなり、２日後には紅皮症の状態になり発熱３９℃もがあり、ぐったりしたために来院した。全身に浸出液がみられた。全身にvery strongのステロイド軟膏を直ぐ塗布したところ、６−８時間後には発熱もなくなり浸出液も止まった。１日３回ステロイド軟膏を塗布し続けたところ３日後にはほぼ快復した。

 

犬・猫アレルギー対策

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犬を洗浄すれば皮屑の抗原を一時的には減少できるがすぐに元に戻ってしまう^19）。空中の犬抗原は半減する程度である^19）。HEPAフィルターを用いた空気清浄機で犬の抗原を減少する事が出来る^17）。ベットカバー（acaricide国内ではダスキン）の着用とhot washing によって、空中のダニ抗原を減少させられる。さらにホコリ中の猫抗原も減少する事が出来る^11）。しかし猫を除去しないで、HEPAフィルターとカバーの併用しても、ある程度抗原量は低下させられるが、症状を改善されるほどではない^14）。カーペットの除去、猫の洗浄、空気清浄機等の併用では57％の抗原を低下できるが、カーペットを敷いたままだと7％しか低下しない^15）。いすれにしても猫を除去しないで症状をコントロールするのは難しい^14）。猫にアレルギーがあれば喘息発作による入院の大きなリスクファクターになる^３３）。

しかし1歳未満で猫または犬を飼い始めた児と兄弟の多い児は7-9歳で鼻炎に、12-13歳で喘息に罹患する率が少ないとの報告がある^9）。２歳以下の喘鳴で入院した患者で猫を飼っている患者はその後３年間で喘息になるのが有意に少なかった^34）。一律にペットを除去するよう指導する事に問題があるかもしれない。減感作療法は猫では効果があるが^26）28）、犬では効果が十分ではない^26）。その猫に対する効果も治療を中止して5年経つとほぼ治療前に戻ってしまう^27）。